ABOUT PATLABOR

この物語はフィクションである
……が、10年後においては
定かではない

INTRODUCTION

汎用人間型作業機械レイバーが普及した近未来の東京で、レイバー犯罪と呼ばれる新たな社会的脅威に立ち向かう「ロボットのお巡りさん」――特車二課の日常と活躍を描くメディアミックスプロジェクト、それが『機動警察パトレイバー』だ。
ゆうきまさみ、出渕裕、伊藤和典、高田明美、押井守の5人のクリエイターにより結成されたユニット「ヘッドギア(HEADGEAR)」から生み出されたこのプロジェクトは、6本のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)シリーズから始まった。のちに「アーリーデイズ」と呼ばれることになるこの初期OVAシリーズは、当時の平均的なOVA商品よりも大幅な安価な4800円という価格設定戦略と、ロボットをシステムとして描く斬新な視点や精緻な東京の描写、個性豊かなキャラクターの日常に重きを置いたドラマなど内容面での高評価とが相まって大ヒットを記録。

さらに初期OVAシリーズのリリースととき同じくして、ヘッドギアメンバーであるゆうきまさみによる漫画版も週刊少年サンデーにて連載が開始され、こちらも大きな好評を得る。OVAと漫画、メディアを超えたふたつの作品展開の相乗効果による人気を受け、『パトレイバー』は、その後も劇場版やTVアニメシリーズなど次々と、そして矢継ぎ早に新たな展開を発表。さらには小説やオーディオドラマ、ゲームと、メディアの枠組みを超えて多数の作品を生み出し、「メディアミックス」という手法を先駆的に用いた記念碑的プロジェクトとなった。

2014年には押井守総監督による実写ドラマ・映画シリーズである『THE NEXT GENERATION パトレイバー』が製作。2018年にはシリーズ誕生30周年を迎えたことで、それを記念する展示会やイベントなどが多数開催され、大きな盛況を得た。新プロジェクトである『PATLABOR EZY』も控えており、『パトレイバー』は今なお大きな注目を集め続けている。

STORY&CHARACTER

ロボット技術の躍進によって生まれた汎用人間型作業機械「レイバー」が、あらゆる分野に普及している20世紀末。首都、東京では、1995年に起きた直下地震からの復興と、東京湾に大堤防を建設する国家事業「バビロンプロジェクト」が生み出した大量需要によって、無数のレイバーが稼働していた。しかしレイバーの急速な普及は、レイバーに関連する事故や、レイバーを用いた犯罪――「レイバー犯罪」という新種の社会的脅威を生み出す。これに対抗するため警視庁は、本庁警備部内に特殊車輌二課を創設。通称“特車二課パトロールレイバー中隊”「パトレイバー」がここに誕生した。
さらに警視庁は特車二課に警察任務用として開発された新機種、篠原重工製98式AV-イングラムの導入を決断。合わせて、新機種を運用する第2小隊の増設も決定される。
しかし、その栄光ある第2小隊に配属されたのは、

昼行灯で何を考えているかわからない水虫の隊長、後藤喜一
機械フェチだがソフトにはからきし疎い1号機操縦担当、泉野明
大手レイバー企業御曹司で皮肉屋の1号機指揮担当、篠原遊馬
正規の教育を受けた警官ながら、粗暴でトリガーハッピーな2号機操縦担当、太田功
唯一の妻帯者で、胃薬を手放せない気弱な元サラリーマン、進士幹泰
その体格ゆえレイバーに搭乗できない悲劇の巨人、山崎ひろみ
実は太田よりも危険なクールビューティー、香貫花・クランシー
優秀な警察官だがただならぬ過去を抱えた、熊耳武緒

という、良く言えば個性豊かな――悪く言えば、真っ当な警察官らしからぬ面々ばかりであった。精鋭になるか、はたまた独立愚連隊になるか――前途多難な特車二課第2小隊活躍の物語が今、始まった。

LABOR

「レイバー」とは汎用人間型作業機械の総称である。英語で「労働者」の意であるその名の通り、主に土木・建築など産業分野において活用されいている。法律上は特殊車両に分類されていることから、原則的にナンバープレートが取り付けられており、その操縦には多脚制御機免許が必要となる。レイバー産業には多数のメーカーが参戦しており、毎年のように新モデル発表され、機体性能の向上は日進月歩の勢いとなっている。
レイバーは専用の「オペレーティングシステム(OS)」によって制御され、レイバーの初回起動時には操縦者によってインストールと設定を行う必要がある。OSには操縦者がレイバーを運用した際のデータが蓄積され、記録されたデータの差異によって動作に個体差が生じ、これがレイバーの個性となる。

第2小隊に導入された「98式AV-イングラム」は、篠原重工によって警察任務専用に開発された最新鋭機種。「98式」は1998年制式採用であることを示し、「AV」とはAdvanced Vehicle、すなわち汎用機を示す英熟語の略語である。人間に極めて近しい体躯をしており、さまざまなオプション装備を自在に扱う器用さと抜群の運動性能を持ち合わせている。

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SERIES

メディアミックスの先駆的存在である『パトレイバー』は、これまで多数の作品・シリーズが(時に並行して)製作されてきた。そのため『パトレイバー』の各作品は、基本的な設定や登場人物こそ共有されているものの、細部の設定やストーリー展開の異なる、パラレルワールドとして設定されている。
『パトレイバー』のこのパラレル展開を整理すると、大きく4つの軸に分けることができる。

ひとつは『漫画版』の軸で、これは後述した作品と交わらない独自の時間軸となっている。

もうひとつが『初期OVA(アーリーデイズ)』を起点とする軸で、『機動警察パトレイバー the Movie』、『機動警察パトレイバー 2 the Movie』、そして実写シリーズ『THE NEXTGENERATION パトレイバー』と繋がっていく。

3つ目のラインが富士見書房から刊行されている全5巻のノベライズシリーズの軸で、『初期OVA』と『the Movie』の設定をベースにしつつ、後述する『ON TELEVISION』の設定も取り込まれている。

最後が『ON TELEVISION』の軸で、これは『NEW OVA』そして『EZY』に繋がっていくことが明言されている。

劇場版3作目である『WXⅢ 機動警察パトレイバー』は、『漫画版』のエピソード「廃棄物13号」をベースとしているものの、物語の展開は大きく異なる。『the Movie』『2 the Movie』『ON TELEVISION』の設定が混在していることから、漫画版以外の3つの軸のうちいずれにも繋がっているとも、繋がっていないともいえる。

『ミニパト』『機動警察パトレイバーREBOOT』などの短編はどの軸にも属さない、番外編という趣となっている。

ただし、ここまで説明した内容はあくまで、各作品を厳密に比較して区分けした場合のものであり、この内容を把握していなくても、作品を楽しむことに差し支えはない。大枠となる基本設定は共通のため、どの作品にどの順番から触れても楽しめることも『パトレイバー』シリーズの魅力のひとつである。